たとえば朝会社に行こうとしたら路上で知り合いに会ったとする。お互いに「ボンジュール!」と挨拶を交わしてからちょっと立ち話になったとして、別れ際にこのふたりは「ボン・ジュルネ!(BONNE JOURNEE !)」という言葉を交換して別れるだろう。。「ボン・ジュルネ!」というのは「よい一日を!」つまり英語で言う「ハヴ・ア・グッド・デイ!」である。
これがもし朝ではなくて夕方、たとえば会社の帰りに行きつけのカフェに寄って赤ワインを一杯引っ掛けた後だとすると、店を出る時には店の人や店内の顔見知りと「ボン・ソワレ!(BONNE SOIREE !)」と言い合うことになる。「よい晩をお過ごし下さい」とでも訳すべきか。「ボン・ソワ!(こんばんは!)」と言いながら店に入り、出る時には「ボン・ソワレ!」と言うわけだ。あるいは会社でも先に退社する人がまだ働いている人に「ボン・ソワレ!」と言いながら帰ったりする。そういう時にはもちろんこちらも「ボン・ソワレ!」と言い返す。
あるいは金曜日の夜会社の同僚と別れて帰宅する時には、「ボン・ウィーケン!(BON WEEK-END !)」「よい週末を!」と言いあう。
これから旅行に行く友人には「ボン・ヴォヤージュ!(BON VOYAGE !)」「よい旅を!」、ヴァカンスをとる人には「ボン・ヴァカンス!(BONNE VACANCE !)」と言う。
こういうふうに相手がこれから起こそうとするアクションや相手にこれから訪れるだろう時間、つまり相手のごく近い未来に対してそれが「よいものでありますように」と祈る言葉として「ボン・○○○○!」という言い方がフランス語にあって、これには様々なヴァリエーションがあるのだ。
たとえばレストランで給仕人が料理を運んで来て、テーブルにお皿を並べ終わると客に対して「ボナペティ!(BON APPETIT !)」直訳すれば「よい食欲を!」と言う。「たんと召し上がれ!」ということだ。会社なんかで「昼飯行ってきまーす」とか言いながら席を離れたりする時も隣の人に「ボナペティ!」と言われたりする。
駐車場の出口なんかによく「ボン・ルート!(BONNE ROUTE !)」と書いてあって、「よい道を!(よいドライブを!)」ということであろう。
メールで、「ご依頼のあったファイルを添付しました」なんていう文章の最後に「ボン・レセプション(BONNE RECEPTION) 」と書いてあったりする。直訳すれば「よい受け取りを」だが、まぁ日本語で言えば「よろしくご査収下さい」であろう。
あるいは「ボン・クラージュ!(BON COURAGE !)」と言えば「よい勇気を!(=がんばれ!)」という意味だし、「ボン・シャンス!(BONNE CHANCE !)」は「よい運を!(幸運を祈る!)」っていうことだ。
このように「これから相手がする行為などのアタマに『ボン』をつけて、それがうまくいくことを願う」言葉はいくらでもバリエーションが作れる。これから買い物に行く人には、いいものが買えるといいねという気持ちを込めて「ボン・ショッピング!(BON SHOPPING !)」と言えばいいし、これから歯医者に行く人には勇気を出せ、という意味で「ボン・ダンティスト!(BON DENTISTE !)」と言えばいい。
さらには、これからカレーを食べに行く人には「そのカレー、うまいといいね」という意味で「ボン・カレー!」と言ってあげたいし、これから良家のお坊ちゃんとデートなの、という女の子には「ボン・ボンボン!」と言ってあげたいと思う。
ちなみにこれから彼女とデートなんだ、という男に対しては「ボン・ブール!(BONNE BOURRE !)」と言う。「ブール」というのは動物の剥製を作る時に内臓を抜いて藁なんかで詰め物をするけれどもその詰め物のことだそうだ。だから「ボン・ブール!」というのは「よい詰め物を!」ということで、つまりは「ハヴ・ア・グッド・ファック!」という意味である。ものすごく下品な言葉なのであんまり親しくない人には使わないほうがいいです。
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